部下をジロジロ見ないことも上司の処世術です

部下を伸ばすための適切な「見守り」とは

部下を伸ばすための適切な「見守り」とは

上司の視線が気になる

管理職やプリセプターになると、当然、部下のナースたちを上手く指導しなくてはなりません。任命以前とは違った職責が求められるでしょう。しかし、責任感のあまり、ついつい部下のことを監視するような目で見てしまっていませんか?もしも少しでも心当たりがあるようならば、気を付けなければいけません。

自分が何かをしている際、誰かに見つめられていることに気が付き、思うように体が動かなくなった経験はありませんか?学生時代でいえば、机間巡視の先生が自分の席で立ち止まった途端に数学の問題を解く手が止まってしまった。部活の試合中にふと観客の視線が気になり思うようにプレーできなくなった…というようなことが思い当たる人もいるでしょう。

アーティストやスポーツ選手のなかには、大勢から見られることでテンションがあがり、良いパフォーマンスに繋がるという人もいます。しかし、一般的には、「見られる」ことで緊張する人の方が多いものです。「見られている」と思えば思うほど、緊張してしまい動きがぎこちなくなったり、声が裏返ったり…。これが業務中で、見つめているのが上司だったならばどうでしょう?ますます緊張しそうですよね。もしかすると、緊張やストレスから普段ならばしないミスをしてしまう方もいるかもしれません。

部下であるナースたちは、上司であるあなたが思っている以上にあなたの視線を気にしているものです。目配りも度が過ぎると、相手にとってはストレス要因にしかなりません。もちろん、あなた自身の職責は大切ですが、部下自身の責任感を育てるのもあなたの仕事のうち。何もかもを監視するのではなく、時にはある程度任せるくらいの度量があると、部下もそれなりに自覚をもって伸びやかに成長していくことができるでしょう。

人への指導を行う立場になると、さまざまな苦労が伴うものです。気疲れすることもあるでしょうが、「見る」「見守る」「見ないふりをする」のバランスをとる処世術を身に付けて行くことが大切です。

視線についての実験

ペンシルベニア州立大学のR・バリー氏が「他者の視線」について、興味深い実験を行っています。満車の駐車場において、空きスペースを探してやって来た車が今にも出そうな車がいるのを見つけ停車した場合、見つけられた車の持ち主はすぐに出てあげるのだろうか、といった実験です。
その実験の結果、車が出るのを停車して待っている車がある場合、出発までに39.03秒。車が待っていなかった場合、出発までに32.15秒となりました。

この実験から分かるように、人は他人からジロジロと見られていると抵抗して動かない傾向にあるようです。これを仕事に置き換えると、上司からジロジロと監視されている部下はそれに抵抗するようにわざと動作を遅くしたり、ストレスを感じて普段通りの仕事ができなくなってしまうかもしれません。要するに、仕事の生産性が下がってしまうということなのです。これはマイナスでしかありません。

視線の心理

「目は口ほどに物を言う」ということわざがあるくらい、「視線」には人の心理が表れるものです。言葉にはせずとも、視線から相手の気持ちを図ることができれば、仕事やプライベートでも適切な関係が築きやすくなるでしょう。さまざまな視線に隠された人の心理について、詳しく見ていきます。

人は興味があるものや人物に対して、無意識に見てしまう傾向があります。恋愛や仕事においても同じです。好意を持っている人のことは見ていたいしですし、気にかけている部下のことは心配でつい見てしまうでしょう。もし、よく目が合うなと感じることがあれば、お互いに気になっているのかもしれませんね。プライベートであれば、2人の距離を縮められる目安になりそうです。仕事上であれば、監視しているもしくは監視されているという構図が懸念されます。双方が不快にならない距離感を心がけましょう。

向かい合って話をする際、なかなか視線が合わないという人もいます。この場合、目も合わせたくないほど嫌悪されているのか…と気になりますよね。しかし、なかには他者の目を見るのが苦手という人もいますので、要は自分だけ視線をそらされているのかということがポイントです。もし自分だけが視線を外されているのであれば、これからあなたの印象を良くしていきましょう。必ずしも仲良くなる必要はありませんが、お互いに害なく過ごせるような気配りと距離感が大切です。

話をしていて瞬きを多くする人がいますが、これは緊張の表れだと言われています。人は緊張をしたり不安を感じたりすると、瞬きの回数が増えがちです。もし、相手が緊張をしているようであれば、気持ちををほぐすような会話を心がけましょう。楽しい話題を出したり、努めて笑顔で話したりして相手に安心感を与えられると良いですね。

また、下記のように、視線の方向にも人間の心理が表れると言われています。

  • ・左上/過去の体験や以前に見た風景など、事実を思い出している
  • ・右上/未知の事柄、今まで見たことない光景を想像している
  • ・左下/自分自身と対話している状態で、理由や意見を考えている
  • ・右下/言葉で表現しづらい感覚的なことに思いを巡らせている

つまり、相手が左側に視線を向けている場合は、概ね事実に基づいて話そうとしているといえるでしょう。右側に視線があるときは、曖昧なことに思いを巡らせている状態かもしれません。絶対的な根拠があるわけではありませんが、人の心理を思いやるという面では参考になりそうですね。なお、これは右利きの人の傾向であり、左利きの人は上記とは逆の視線の向きで考えてください。

ちょうど良いタイミングで視線を合わせたりそらしたりできると、話していて楽しく幸せな気持ちになります。もし、部下のナースが自分に対してそう思ってくれると嬉しいですよね。きっと、その後の関係性や業務の効率も良くなることでしょう。そのためには、まずあなたが部下の視線に隠された心理を図ってみてください。そのうえで、緊張をほぐし不安を汲み取ってあげましょう。また、相手がストレスに感じないくらいのほどよい視線を向けるよう、あなた自身も心がけましょう。

管理職としての心得

部下を心配しているとしても、度が過ぎる監視は相手にとって苦痛でしかありません。最近では、視線による「セクハラ」や「パワハラ」を感じる人も少なくないようです。たとえば、上司の視線に関して以下のように感じている人がいます。

  • ・圧力を感じる
  • ・何かミスをしたのかと不安になる
  • ・視線が気持ち悪い
  • ・上司の視線が気になって仕事がやりづらい
  • ・緊張してミスをしてしまいそう

良かれと思って見守っていたとしても、必ずしも部下にとっては頼もしい上司とはいえないということが分かります。つまり、余計なトラブルを防ぐためにも、部下をジロジロと見て監視するのは止めたほうが賢明です。自分が新人看護師のころを思い出し、部下の気持ちになって接するようにすると良いかもしれませんね。
では、上司やプリセプターとして、どのような接し方をすればよいのでしょうか。管理職としての適切な心得について見ていきましょう。

【部下に関心を持つ】

関心を持つということと監視するということは違います。ここでいう関心とは、部下の話に耳を傾けたり立場を慮ったりすることです。一見、未熟な意見を言っている部下でも、相手の話をよく聞いたりバックグラウウドを配慮したりすることで理解に繋がるでしょう。
また、部下に話しかけられたときは後回しにせず、できる限り自分の手を止め相手に視線を向け話を聞きましょう。部下のことをすべて肯定せずとも、関心と理解が相手に伝われば信頼関係が築きやすくなります。部下にとっても理解者がいることは励みになるはずです。

【適切な管理をする】

上司である以上、部下のことには責任を持たなければなりません。しかし、上司として自分の職責が問われることを恐れるあまり、部下を叱咤ばかりしていては反発心を招くだけです。部下の自覚や自主性を育成するのも大切な役割なので、まずは相手の良いところに目を向け褒めて伸ばしてあげましょう。どんなに部下が心配でも、ある程度信頼し自由を与え、そっと見守るくらいが適切です。人は何よりも自由な空気を好みますし、その方が確実に仕事がはかどります。
もちろん放ったらかしにするのではなく、ある程度の区切りを付けてチェックする必要はありますが、部下を含め職場の雰囲気を良くすることも上司の大切な仕事だと心得ましょう。

【上司としての研鑽に励む】

経験や年齢を重ねると、つい自分の知識や体験だけに基づいて物事を判断しがちです。しかし、日進月歩の医療現場において固定概念は危険です。部下への適切な接し方も、時代とともに変化してきています。
自分の経験だけに頼るのではなく、常に新しいことに目を向け学ぶという姿勢が必要です。

今知ってほしい「良い管理職」になれる本

管理職といえども、ひとりの人間です。ときには悩んだり不安に思うこともあるでしょう。そんなときにオススメなのが、管理職の心得について書かれたこちらの本です。この本を読んだ人からは、次のような感想が聞かれています。

「管理職の心得-リーダーシップを立体的に鍛える-」大島 洋(著)

  • ・管理者として成長していくための心得がよく分かった
  • ・悩んでいる管理者の立場を理解した上での解決策が心強い
  • ・もっと早くこの本に出会っていたかった
  • ・上から目線ではないので心にすっと入り理解しやすい

もし、上司としてのあり方に悩んだときは、手に取られてみてはいかがでしょうか?少しでも良い方向に向かえば幸いです。

Category : 部下の仕事の生産性を上げるには?

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